【裁判事例から学ぶ】従業員のリベートは会社の利益?課税の対象になるかが争われた話
目次(リンクしてます)
■この記事でわかること
- 社員が受け取ったお金(リベート)が会社の利益とみなされるのか?
- 税務署からの指摘や税金の追加請求(重加算税)とはどういうものか
- 修正申告をするときに注意すべきポイント
- 会社が備えておくべきルールや対応策
はじめに
こんにちは、税理士の吉田茂彦です。
今回は、社員がこっそり取引先から受け取っていたお金(いわゆるリベート)が、会社の利益とされて多額の税金を課されたケースをご紹介します。
この事例は、企業の内部統制や税務リスクの考え方において、とても参考になる内容です。
事件の概要:社員のリベートが「会社の収益」とされた
ある旅館業の会社(以下A社)では、社員が取引先から継続的にリベート(謝礼金のようなもの)を受け取っていました。
税務調査でこれが発覚し、税務署は「そのお金は会社の収入にあたる」として、過去数年分の税金の再計算(更正処分)と重加算税(悪質なケースにかかる罰則的な税金)を請求しました。さらに青色申告の取り消しという重い処分も下されました。
これに対してA社は「これは社員個人の不正であって、会社の利益ではない」として、裁判で争うことになったのです。
裁判所の判断:リベートは社員の個人所得、会社の利益ではない
裁判所は次のような理由で、会社の主張を認めました。
- 会社の就業規則ではリベートの受け取りを禁止していた
- リベートは会社の管理下ではなく、社員が秘密裏に受け取っていた
- その社員には、取引先や価格を決める権限がなかった
- 一部のお金が会社の備品購入に使われていたが、それも本人の独断だった
このような背景から、裁判所は「リベートは会社の利益ではなく、社員が勝手に得た個人的な所得である」と判断し、すべての課税処分を取り消しました。
この裁判から学べること
今回のケースでは、「税務署からの指摘=正しい」とは限らないことが示されました。
もし不当だと感じる場合は、あわてて修正申告をする前に、事実を整理し、冷静に対応することが大切です。
また、会社としては、以下のような内部ルールや体制を整えておくことが、税務リスクを減らす鍵になります。
- リベートや謝礼金の禁止を明文化し、社員に周知する
- 不正を通報できる社内窓口を設ける
- 税務調査に備えて帳簿・書類を整えておく
- 疑わしい事案があれば、税理士などの専門家に相談する
まとめ
「社員のやったことだから会社は関係ない」と思っていても、税務上は会社に責任が問われることがあります。
今回の判決は、会社と社員の関係、内部統制、税務リスクの考え方において、重要なヒントを与えてくれます。
税務署からの重加算税や青色申告取消などの厳しい処分に直面したときは、あきらめずに事実と法律の観点から見直す姿勢が大切です。