• 水. 10月 5th, 2022

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節税・決算対策の方法

吉田茂彦

1 節税の現状及び問題点

(1) はじめに

 節税については、医療費控除といった比較的少額のものから数億円規模のものまでありますが、今回は、個人や法人の所得が例年以上に多く出たことからその所得を1千万円~数億円圧縮できないだろうか、また、相続税について現状では数百万円から数億円の税金がかかることから何とか対策がとれないだろうか、あるいは、ご子息等への円滑な事業承継について何か有効な対策はないだろうかといった観点から、個人の場合と法人の場合に分けて述べたいと思います。

(2) 個人の節税の現状と問題点

① 所得税

 所得税の節税方法については、不動産賃貸業の場合であれば法人化するなどして節税対策をしている方もいらっしゃると思われますが、一般的にはあまり節税方法がないのが実情であり、節税対策をなにもしていない方も多いのではないかと思います。

② 相続税

 相続税の節税方法としては、一般的に、ローンを組んで賃貸マンション等を購入する方法等が行われています。
 ただ、賃貸マンションを購入する節税方法については、物件の立地があまりよくない場合や築年数が経過した場合には競争力が低下することにより空き家になり、借金が返せなくなるリスクがあります。
 また、借入金により賃貸マンションを購入する節税方法については税務署から否認された事例が複数報道されており、令和4年4月、最高裁判所が税務署の否認処分について是認した事例が発生しています。

(3) 法人の節税・決算対策の現状と問題点

① 法人保険・経費の前払いについて

 法人の所得を圧縮する方法としては、代表的なものに法人保険があります。
 ただ、この法人保険については、最近、国税庁の取り扱いが変更になったこともあり、以前と比較すると節税効果が薄くなっています。
 法人保険以外の法人の節税方法としては、賃借物件の賃料等について、決算期末から1年以内のものを一括して前払いする方法等があります。
 ただ、この方法は1回使うと2回目からは節税効果が無くなり、また、数千万円以上の所得を圧縮する方法としては選択が難しい法人も多いと考えられます。

② 組織再編について

 筆者は、国税局、税務署、国税不服審判所等に勤務したことがあることもあり、他の税理士から、節税スキームを税理士自身で作成・検討したところ、法人の組織再編成により法人税や源泉所得税がゼロになるのだが、自分の考えに間違いは無いか等相談を求められることがあります。
 このような場合、示されたスキームをよく検討し、考え方に間違えがない場合、理論上は正しいが、組織再編成の場合、法人税法の中に、これを容認した場合には税負担を不当に減少させる結果となると認められる場合には、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより税額等を計算できる旨の規定があるので、なぜそのようなことをしたのかを合理的に説明できないと否認される可能性がある旨回答しています。
 このような税務署長の認めるところにより税額等を計算できる旨の規定は、所得税法、相続税法にもあります。
 このケースでは、逆に言えば、なぜそのような行為をしたのかを税務当局に合理的に説明できて、税務当局が十分に納得するかどうかは別として、まあいいだろうも含めて、その行為が否認されなければ、その税の軽減を伴う行為が事実上認められる、つまり節税が可能ということになります。

2 節税・決算対策の方法の具体例

 節税がしたい、事業承継対策がしたいと考えているあなたに、現在考えられる節税等の事例を個人、法人に分けてご紹介したいと思います。

(1) 個人の節税方法の具体例

① 所得税の節税方法の具体例

 個人で、例えば、仮想通貨などで大きな利益が出た場合の節税方法としては、①特定の太陽光発電設備への事業投資、②コインランドリーへの事業投資などが考えられます。
 太陽光発電設備への事業投資については、一定の期限までに国内の特定の場所に太陽光発電設備を設置して事業を行う場合、その設備について、即時に一括して減価償却できる制度があります。この即時償却の制度は廃止されたと思われている方も多いようですが、実際には、一部の地域に限定して現在でもあります。
 また、コインランドリーへの投資は、初期に設備投資についての減価償却費等の費用を計上して他の利益と相殺し、その後、コインランドリー事業から継続的に収入を得ていくものです。

② 相続税の節税方法の具体例

 相続税の節税方法としては、既に述べたとおり、融資を受けて不動産を購入する方法が代表的ですが、財産分割対策にもなる不動産信託受益権の購入という方法があります。
 これは、個人ではなかなか購入が難しい都心の優良賃貸物件について投資するものです。
 もう少し詳しくご説明いたしますと、一棟又は複数区画の優良な賃貸マンション等を信託銀行に信託し、不動産から発生する賃料等の利益を受け取ることができる権利を購入するものです。
 この不動産信託受益権は、一般の人や会社が購入し易いように1千万円程度から販売されており、小口化された受益権は不動産小口信託受益権と呼ばれることもあります。

 不動産信託受益権の購入については、次に述べる理由から一般的にあまり知られていません。
 ① ローンで購入できないことから金融機関が紹介しない。
 ② 都心の優良賃貸物件の建設は大手建設会社が請け負っており街の建設業者が勧誘しない。
 ③ 様々なリスクを考慮して購入した人が節税になるものを買ったとオープンにしない。

 しかし、この不動産小口信託受益権の購入については、①空室リスクを減らしたい、②相続税の対策をしたい、③多少の利益があると嬉しい等とお考えの方々に向いていると考えます。
 そこで、次にメリットとデメリットについて整理して述べます。

【メリット】
 ① 賃借人の募集等の不動産管理業務は専門業者が行い、年率約2%の不動産所得が得られる。
 ② 1区画を購入して賃貸する場合と比較すると複数の区画を共有するのと同様なことから空室リスクが少ない
 ③ 購入時の費用が安い。(例:印紙代200円、確定日付取得費700円の合計900円)
 ④ 不動産の相続税の評価は金融資産の評価よりも相当低いので相続税の軽減を図ることができる。(相続税評価ベースで8割から9割減少。)
 ⑤ 信託の期間が10年程度と比較的長期間であり、次のデメリットでも述べますが、借入もしないことから税務署からの否認リスクが少ない
 ⑥ 都心の優良な賃貸建物の複数の区画を複数の相続人に均質、均等に分けることができる。

【デメリット】
 ① ローンでは購入できない
 ② 信託の期間が、原則、10年程度と比較的長期間となっており、この間、原則、解約できない。
   (5年を経過し売却して利益が出る場合、合意の上、売却して終了する場合もある。)
 ③ 元本保証はなく不動産を保有しているのと同様の不動産市場リスクがある。
 ④ 一般の不動産と異なり案件の数が限られていることもあり、募集が開始されると短期間で完売してしまうことが多い。

  以上、不動産(小口)信託受益権の購入のメリットとデメリットを整理いたしました。
 不動産(小口)信託受益権の購入は、①相続税評価ベースで8割から9割減少させることが可能であり、加えて②税務署からの否認リスクが少ないと考えられます。
 また、空室リスクを減らしたいと考えていらっしゃる方はとても多いと思われますので、現に金融資産を保有されている方は検討されてみてはと考えます。

(2) 法人の節税方法・決算対策の具体例

① 所得圧縮額:1,000万円~数億円

 法人が1,000万円~数億円の所得を圧縮する方法としては、①日本型オペレーティングリース(※)への事業投資や②特定の太陽光発電設備への事業投資等が考えられます。
 日本型オペレーティングリースの具体例としては、航空機、船舶、コンテナボックスへの事業投資などがあります。
 また、太陽光発電設備への事業投資については、所得税の節税方法の具体例で述べたとおり、一定の期限までに国内の特定の場所に太陽光発電設備を設置して事業を行う場合、その太陽光発電設備について、即時に一括して減価償却することができます。
※日本型オペレーティングリースを簡単にご説明いたしますと、契約を通じて飛行機等のリース事業に出資し、リース期間中の事業の損益を法人自身の損益に取り込むことにより、税の繰り延べ及びリース物件の売却益を目指すものです。

② 所得圧縮額:3,000万円前後

 法人が3,000万円前後の所得を圧縮する方法としては、所得税の節税方法の具体例でもご紹介いたしましたコインランドリーへの投資も考えられます。

③ 保険:支出額の40%~50%が損金

 法人保険は、一定の要件を満たした場合、現在でも支出額の40%~50%を支出時の損金にすることができます。

④ 事業承継の節税方法の具体例

 法人の節税方法でご紹介した日本型オペレーティングリース法人保険を活用することにより、事業承継の際に重要となる株式の評価を下げる効果が期待できます。

(3) 節税・決算対策のポイント

 以上、節税方法の現状と節税方法・決算対策の具体例ご紹介してまいりましたが、税務当局から否認されることがなければ、大きな税の軽減を図ることができます。
 今回、簡単にご紹介した節税方法について気になる方は下のフォームからご連絡をお願いいたします。

 なお、不動産信託受益権の購入については、別の記事もありますのでこちらをクリック・タップしてご覧いただければと思います。

執筆者

吉田茂彦
吉田茂彦

・一般社団法人FPマネースクール 主任研究員(税理士、CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士)
・国税庁、国税局、国税不服審判所等に勤務後税理士登録。
・著書 「平成3年版 税務相談事例集」、「平成14年版 法人税決算と申告の実務」、
「平成15年版 図解法人税」、「平成15年版 減価償却質疑応答集」(以上、大蔵財務協会、共著)



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